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PRODIGY英語研究所

『システム英単語メディカル』はしがき

本書は医歯薬看護系の仕事を志す学生のための英単語集です。大学受験はもちろん、大学に進学してからも重要な単語・表現ばかりです。頻度が高く、一般の受験生も覚えておくべき単語から、医系の文章以外ではめったに出現しない医学用語も掲載しています。難度が高くなるにつれて覚えるのが大変になっていきますが、繰り返し本書を開き、耳で聞き、口にして、自分のものにしてください。

医学・保健のトピックは超頻出︕

医系の単科大学や、他の学部とは異なる問題を課す医歯薬看護系の大学入試では、医学・保健のトピックが圧倒的に多く出題されます。そんなことは受験生の常識かもしれませんが、実際にどれくらい多く出題されているか、調べてみると驚くべき結果が出て来ました。
調査に使用したデータは、最近5 年間の大学入試で出題された300 語以上の英語長文6088 題です。全体的に最も多かったのは医学・保健のトピックで、国公立大でも私大でも約15 %を占めています。次が環境・自然の約12%、さらに文化・歴史、社会・雇用と続きますが、医学・保健のトピックは受験する学部に関わらず最頻出の話題でした。さらに、医歯薬看護系の入試に限ってみるともっと顕著な傾向が見られます。

まずは医学部の入試問題を見てみましょう。下のグラフは、この5 年間全国の医学部のみに課せられた入試英語長文で、医学・保健のトピックが占める割合を示したものです。
比較のために、医系以外の大学入試問題における医学・保健のトピックの割合も示しました。

<医学部の英語長文で医学・保健のトピックが占める割合>

このグラフを見れば一目瞭然で、医学・保健のトピックが頻出していることがわかります。国公立大であれ私立大学であれ、医学部を受験するなら、医学・保健のトピックの英文を読める必要があると実感されるのではないでしょうか。たとえば、医学部のみの試験では、他学部と比較して国公立大で約5.5倍、私立大で約4倍も、医学・保健のトピックが出題されています。特に私立大学医学部の英語長文問題の60%が、医学・保健のトピックであることは特筆に値します。

次に歯学部・薬学部・看護学部の大学入試を見てみましょう。今度も同じように、他学部とは別に入試を実施している大学と、それ以外の大学を比較してみました。こちらもまた驚くような結果になりました。

<医学部の英語長文で医学・保健のトピックが占める割合>

*国公立大の歯学部、薬学部、看護学部を一つの項目にまとめたのは、個別試験を実施している大学が少数であるため。

グラフを見れば、歯学部、薬学部、看護学部においても、他学部と比較すると約3 ~ 4倍医学・保健のトピックが出題されていることがわかります。これだけ違えば、覚えるべき単語も当然違います。もちろん、英単語の中にはどんな文章にも共通して登場する表現もありますが、専門的で難しい単語ほど、使われる幅が狭くなるものです。たとえば、本書の§ 3 Final Stageで扱うような難単語は、文系の大学入試には必要ありません。これは医系受験者にとってTOEIC テストに出現する難単語が当面は不要なのと同じことです。
また、簡単な単語でも医系の文章では特殊な使われ方をすることがあります。たとえば、医系の文脈において、apply は「<塗り薬>を塗る」(p.82)ですし、chart は「カルテ」(p.82)、dressing は「包帯」(p.121)、failureは「機能不全」(p.2)、です。こういう単語は、一見簡単そうなだけに注が付けられないことも多く、受験生にとっては点差を生むことになりますから要注意です。
このように、医歯薬看護系の志願者にとって最大のポイントは、医学・保健がトピックの長文の読解であり、そのためにはメディカル・サイエンスの英単語は必須なのです。

超難単語も出題︕どこまで覚える︖

医歯薬看護系の長文問題では、他の学部ではめったに出題されないような英単語が注なしで登場することも珍しくありません。たとえば、apoptosis 「アポトーシス」(p.86)という単語があります。生物選択者には当たり前の単語かもしれませんが、それ以外の人には馴染みのうすい単語かもしれません。この単語が大学入試に始めて登場したのは2006 年で、のべ8000 回の大学入試のデータでも、5大学でしか出題されていませんから、普通の受験生なら知らなくても支障はないでしょう。ところが、医療系の大学を受験する学生にとっては事情が違います。apotosisを出題した学部学科の内訳は、医学科3(滋賀医科大学、千葉大、獨協大),医療技術1(愛媛県立医療技術大),生命環境科学部1(大阪府立大)です。つまり、メディカル・サイエンスを専攻する学生の入試だからこそ、apotosisは登場したのです。しかも、これらのうち4つの大学では注も付けられていませんでした。もちろん、この単語を知らなくても本文の内容から類推することはできたかもしれませんが、知っていれば、はるかに簡単に読み進められたはずです。医歯薬看護の志願者は大学に入るためにも、そしてその後のためにも、積極的にメディカル英単語を覚えていくべきです。
難単語に注を付けるか付けないかの判断は大学によって異なりますし、年度によっても違います。たとえば、apoptosisに注を付けなかった滋賀医科大学や千葉大学医学部の試験において、mutation「突然変異」という単語には注が付けられました。一般の大学入試における頻度で言えば、mutationはapoptosisの50倍以上ありますから、その反対でも良いかもしれません。実際、注を付けずにmutationを出題した大学も、愛知医大、杏林大医学部、秋田大医学部など数多くあります。
もう一つ例を挙げましょう。abdomen「腹部」(p.88)という単語は通常の大学入試問題では頻度の低い単語ですから、慶應大学医学部、福井大医学部、三重大などの入試では注が付けられました。ところが、杏林大医学部、国立看護大、酪農学園大獣医学部の入試では、このabdomen が注なしで出題されています。他にも、文系の大学入試にはめったに出ないembryo「胚」(p.119)という単語が、国立看護大、日本大薬学部、杏林大医学部の入試で注を付けずに出題されています。
このように、大学入試の過去問を見ても、どこまで覚えるべきかの線引きはなかなか厄介です。大学の難易度と大学入試問題の難易度は必ずしも一致しませんし、同じ大学でも年度によって注が付いたり付かなかったりする場合もあります。おそらく出題者は本文や設問の難易度などを多角的に考慮して、注の有無を判断されているのでしょうが、受験生としては戸惑うかもしれません。
しかし、上に挙げたような単語は、医系を志す人ならば知っておいて損はないのです。受験で勉強が終わるわけでもありませんから、重要度が高く、頻度の高い単語から順番にマイペースで覚えていけばよいのです。ただ、順序を間違えると、受験という観点からは効率が悪くなります。本書の作成にあたっては、まずは受験で役に立つ単語からはじめ、徐々に難易度を上げてゆくよう細心の注意を払い、単に入試問題に出現する回数だけでなく、注の有無、設問の内容まで調べた上で、重要度の高い単語から順番に配列しています。ですから、安心して本書の順序にしたがって取り組んでください。まずは誰もが知っておくべき重要単語から始め、徐々に難度の高い単語を学習できるようになっています。最後はかなり難度が高くなじみの薄い語句が登場しますが、大学入試までに本書を全部覚えなければならない、とは思わないでください。入試で満点を取る人はいないのですから、難単語は大学で覚えても良いのです。特に§ 3の単語は、大学入試という観点からは、知らなくてもほとんど支障がないでしょう。ただ、余裕があるときに記事に目を通し、CDで聞いてみておいてください。それだけでもきっと助かることがあるはずです。

最後に、本書も多くの人たちとの触れあいから生まれました。受験生の皆さん、大学に入って顔を見せに来てくれた人たち、社会人になってからも話を聞かせてくれた方々に、感謝いたします。どのような立場になられても、皆さんの知識が誰かの役に立つことを願っています。
今回も小島茂様をはじめ駿台文庫の皆さまに様々なご教示を頂きました。また、『<中学版>システム英単語』に続く二度目の幸運で、編集・デザインなどは斉藤千咲様にご担当頂き、細部に至るまでていねいに作成して頂きました。他にもここには挙げきれないほど多くの方に支えられて仕事をすることができたことに感謝いたします。

2015年 冬 / 著者しるす

本書の構成と使い方

本書の構成

本書を作成するにあたっては、単に入試問題における頻度だけでなぐ本文の内容や設問を詳細に検討し、重要度順に次のように配列しました。

■ Part 1 Essential Stage

医系志願者だけでなく、文系の受験生でも知っておくべき医系英単語。この章のほとんどが 『システム英単語〈改訂新版〉』にも収録されている修英単語です。ただし、本書では医・保健の文脈に合わせたフレーズ、訳語、記事を掲載しています。 たとえば, solution(p.56)は一般の文脈では「解決」の意味が多いのですが 、医系の文脈では「溶液,溶けること」が重要です。本書の〈Key Phrase〉、訳語の順序はもちろん、派生語、語源の記事などもすベて医系の文脈に合わせていますので、しっかり確認してください。

■ Part 2 Advanced Stage

医歯薬看護学部の志願者は知っておきたい英単語。大学によっては訳注が付いている場合もありますが、付いていない場合もあります。 なじみのある単語でも医療関連の文章では意外な意味で登場することがあるので要注意です。 医歯薬看護学部の入試問題で差がっく英単語です。

■ Part 3 Final Stage

比較的出題頻度が低ぐ出ても注が付いていることが多い英単語。大学受験のためだけなら、覚えていなくても大丈夫ですが、大学に入ればすぐに必要となる英単語です。目を通し、耳にしておくだけでも、きっと役に立つ英単語です。

本書の使い⽅

英単語を覚えるためにはいくつかのステップがあります。次のステップを意識して、単語を自分のものにしてください。

  • Step 1 単語と出会う
    単語のつづり字を眺めるだけじゃなく、語形や語源が類似した他の単語と比較してください。その上で、単語の意味を理解し、明確なイメージを持ちましょう。

  • Step 2CDで音を確認
    発音がわからない単語はすぐに忘れてしまいます。まずは音を確認して、口に出してみましょう。慣れてきたらCD と一緒にシャドウイングするのがオススメです。

  • Step 3 自分で発音し、書く
    丸ごと覚えるつもりでKey Phrase を声にしたり、書いたりしてください。受動的に読んだり聞いたりしているだけではなく、口や手を動かして自分の単語(発表語彙)にすることが、長期記憶につながります。

  • Step 4 何度も繰り返す
    一度覚えたことも、放っておくとすぐに忘れてしまいます。繰り返し何度も本書を開いてシャドウイングなどしてください。