本書の作成にあたっては、『TOEIC テスト公式問題集新形式問題対応編』、『TOEIC テスト新公式問題集』vol.1 ~ 6、『TOEIC テスト公式プラクティス リスニング編』、『TOEICテスト公式プラクティス リーディング編』など、入試可能なすべての公式の公開資料はもちろん、アメリカ、日本、韓国でベストセラーとなっているTOEIC テスト対策本などからデータを抽出しました。さらに、『TIME』、『National Geographic』などの雑誌、映画のスクリプト、小説、評論、演説など1億語を超える独自のデータベースと照合し、TOEIC テストに出題される語彙の傾向を分析しました。その分析をもとに本書の単語は頻度順に配列され、それぞれの単語の意味まで頻度順になっていますから、TOEIC テスト対策に最適な教材です。
大学入試や実用英語では頻出の単語でも、TOEIC テストではめったに出現しない英単語があります。たとえば、下の単語はTOEIC テストの公式問題集や公式プラクティスに1度も出現していない単語です。
ape 「類人猿」, bribe「賄賂」、condemn「非難する」、desperate「必死の」、destiny「運命」、dismiss「解雇する」、epidemic 「伝染病」、famine 「飢饉」、hemisphere 「半球」、heredity 「遺伝」、invade「侵略する」、molecule 「分子」、Muslim 「イスラム教の」、persecution 「迫害」、pneumonia「肺炎」、priest 「司祭、僧侶」、virtue 「美徳」
これらの宗教、歴史、政治、思想、科学の文章に頻出する単語は受験英語では必須ですが、TOEIC テストには出現しません。それはTOEIC テストでは宗教や政治を論じる文章も、科学的なレポートも出題されないからです。TOEIC で出題されるのは、オフィスや家庭や学校における日常生活で必要とされる実用英語です。
brochure「パンフレット」→ p.64、complimentary 「無料の」→ p.110、incur「<経費など>がかかる、被る」→ p.254、itinerary「旅程表」→ p.157、mentor「指導者」→ p.96、reimburse「払い戻す」→ p.82、tentative「仮の」→ p.212、turnover「離職率」→ p.310
これらは受験英語ではめったに出題されませんが、TOEIC テストでは頻出する英単語です。本書ではこういう要注意単語に□のマークを付けていますから、特に注意をして学習してください。受験英語に自信のある方やTOEIC 対策に多くの時間を割けない受験者は、この□の付いている単語・熟語を重点的に確認しましょう。
TOEIC テストでは、必ずしも実用英語で頻度の高い意味・用法が出題されるとは限りません。たとえば、bill という単語は、TIME 誌や大学入試では「法案」の意味が最も多く、「紙幣」の意味も数多く出現します。ところが、TOEIC テストのbill はほとんどが「請求(書)」の意味です。同様に、account という単語は、account for A「A を占める、A を説明する」, take A into account「A を考慮に入れる」など様々な意味・用例がありますが、TOEIC テストでのaccount は「(銀行などの)口座」が90%以上です。さらにもう一つ例を挙げると、outstanding という単語はふつう「目立った、顕著な」という意味で使われますが、TOEIC テストでは次のような用例も覚えておくべきです。
同様に、balance は「バランス、均衡」ばかりでなく、「差額」の意味でも出現します。
TOEIC テストで頻出するこうした身近な商業活動で使われる語彙に、本書は焦点を当てています。
本書の
単語をフレーズで覚える利点は、フレーズには単語のイメージ・語法が含まれていますから、それを自然と覚えることができますし、何よりフレーズ単位で意味を認識できるようになります。リスニングであれリーディングであれ、1語ずつばらばらに覚えた単語は1語ずつ認識されますが、フレーズ単位で覚えた表現は、フレーズ単位で認識します。つまり、フレーズ学習法は速読速聴の秘けつでもあるのです。一つ一つの単語を覚えようとするよりも、
本書の
TOEIC テストはリスニングセクションのウエイトが非常に高いのが特徴です(45分・100問・495点)。英単語・英熟語を覚えるときも音を使って学習しないと対応できません。まずは付属のCD を聞きながら、書籍で
なお、本教材のCDの英語はアメリカ英語と、イギリス英語の両方によって読まれています。(CD MP3 p.XI)TOEIC テストでは、アメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語、カナダ英語が使用されますが、オーストラリア英語はイギリス英語を基にして近年ではアメリカ英語の影響も受けています。カナダ英語もアメリカ英語とイギリス英語の両方の要素を持っています。ですから、アメリカ英語とイギリス英語の両方に慣れていれば試験で困ることはありませんので、安心してください。
各Unit の最後にある< PRACTICE TEST >は、TOEIC テストそのままの形式・出題項目ですから、実戦演習のつもりで解いてください。いわば直接得点を左右する項目ですので、
長文中の英文や使用単語の平均的な長さなどをもとに、英文のReadability(読みやすさ)を数値的に判定するFlesch Reading Ease、Flesch-Kincaid Grade Levelというソフトがあります。Flesch Reading Ease は数字が高い方が平易な英文で、数字が低いほど難解な英文です。この数字が60 以上であれば英米の中学生が容易に理解できるレベルと考えられています。Flesch-Kincaid Grade Levelはアメリカの学年のレベルを示し、こちらは高い方が難解ということになります。仮に7となっていればアメリカの中学1年生レベル、10となっていれば高校1年生レベルというです。この2つのソフトを使って、まず日本の代表的な大学入試問題の英語長文と、TOEIC テストなどを調べると次のような結果になりました。
Flesch Reading Ease | Flesch-Kincaid Grade Level | |
国公立大2 次&私立大* | 39~66 | 9~15 |
TOEIC テスト/ Listening | 78.7 | 4.8 |
TOEIC テスト/ Reading | 48.8 | 10.2 |
TOEFL iBT テスト | 48.7 | 11.5 |
もちろん、ソフトの数値と読む人の実感は一致しないことが多いのは言うまでもありませんが、上の数値を見る限り、TOEIC テストの英文のReadability はセンター試験レベルと言っていいでしょう。
つぎに語彙レベルを調べてみます。これはJACET8000 などのデータを基に、何語覚えていれば英文の何%の単語をカバーできるかという調査です。(PRODIGY 英語研究所調べ)
4000語レベル | 6000語レベル | 8000語レベル | |
国公立2次試験・私大 | 94% | 96% | 97% |
TOEIC テスト/ Listening | 96% | 97% | 98% |
TOEIC テスト/ Reading | 94% | 97% | 98% |
TOEFL iBT テスト | 89% | 93% | 96% |
英語をスラスラと処理するためには、98%以上の語彙を知っている必要だと言われますから、TOEIC テストで目指すべきは8000 語レベルということになります。しかし、<TOEICテストに出る単語・出ない単語~差がつく単語はこれだ!>(p.Ⅱ )でも触れたように、TOEIC テストには出題されない話題もありますから、8,000 語レベルの単語全部を覚える必要はありません。本書の単語で十分950 点以上狙えますから安心して取り組んでください。
(ちなみに『システム英単語<改訂新版>』だと8,500 語以上の語彙レベルになります。)
これらのデータからわかるのは、TOEIC テストの英文のReadability や語彙レベルは日本の代表的な大学入試よりも簡単だということです。適切な対策をすれば、TOEIC テストのスコアは意外に早く伸びますので、臆することなくに挑んでください。
*国公立大2 次&私立大とは、東京大学、京都大学、大阪大学、慶應大学、早稲田大学、明治大学、日本大学、同志社大学、近畿大学などの入試データ。
TOEIC テストのリスニングテストは、45分間で100問あります。時間も長いですが、読み上げられる速さが1分間に170語以上のスピードで、たいていの大学入試問題よりも速くなっています。また、Reading テストも量が多く、新形式問題ではさらに増えています。
テスト時間 | 総語数 | 問題数 | |
TOEIC テスト/ Reading | 75分 | 6500~7000語 | 100 |
上の数字を単純に割り算すると、1分間におよそ85 語以上の英語を処理できなければならないことになります。もちろん、実際に問題を解くためには、読み返したり考えたりする時間が必要ですから、この倍のスピード、つまり1 分間に約170語のスピードで英文を読む必要があるでしょう。ところが、平均的な日本の大学生が英文を読む速さは1 分間に約120語程度だと言われていますから、たいていの受験者はリーディング問題の最後までたどり着けません。したがって、TOEIC テストの最大のポイントは、リスニングもリーディングも分速170 語で英語を処理できるようになることです。
ではどうすればそういうスピードで英語を理解できるようになるのでしょうか。まず、第一は語彙力の強化です。Paul Nation はじめ多くの英語教育の学者たちが指摘していることですが、リスニングや速読のトレーニングでは98%以上の語彙を理解できる素材を使わないと効果が上がりません。別の言い方をすると、98%以上の語彙が理解できるようになってはじめて、リスニングや速読ができるのです。つまり語彙力がリスニングや速読の基礎ですから、何よりも先に本書の語彙を音からマスターしてください。
次に、単語単位でなくフレーズ単位で意味を認識するように心がけてください。<TOEICテスト対策に合わせた
最後に実践練習は欠かせません。普段から時間を意識して、自分の最速のスピードで英語を読む、聞くという訓練を積んでください。早く読めるようになるためにはできるだけ早く読む、リスニングが出来るようになるためにはできるだけ多く聞く、という当たり前の努力を毎日たとえ5 分でも続けてください。日にたった5分でも全速力で英語を読んだり聞いたりしていれば、3ヶ月もすると驚くほど速くなっているはずです。
まとめると、次の三箇条になります。
TOEIC テスト対策必勝の三箇条
TOEIC テストは適切な対策をすれば確実にスコアアップできる試験ですが、他の試験同様問題形式に慣れる必要があります。目標とする得点が取れるまで、継続してチャレンジし続けてください。点数の伸び方は人それぞれですが、最初の頃には想像もできないほど得点を伸ばす人も数多くいます。まずは焦らずゆっくり始めてください。大学・企業などで頻繁に利用されているTOEIC テストですが、他のあらゆるテストと同様限界もあります。< TOEIC テストに出る単語・出ない単語>(p.Ⅱ)でも述べたように、学術的な文章もジャーナリズムの英語も出題されませんから、TOEIC テストのスコア=英語力というわけでもありません。TOEIC テストを契機に、専門分野で英語を使えるように英語の学習を続けられ、それによって皆さんの世界が広がってゆくことを祈っています。
英語の道は長く、時に険しいでしょうが、まずは今週も良い週末をおすごしください。
本書を出版するにあたっては、何よりかつての教え子達から多くの示唆を頂いたことを記しておきたいと思います。英文校閲にあたってはPreston Houser 先生他何人ものコンサルタントにご助力頂きました。また、本書を企画していただいた小島茂様、久保慶洋様、依田賢樹様、松永政則様、上山匠様をはじめ、多くの方々にご尽力頂きました。編集は蛭田和絵様にご担当頂き、いつもどおり細部にわたるきめ細かい作業と数々の貴重なアドバイスを頂戴しました。深謝。
2016年 春 / 著者しるす
本書は基本的に30単語で1つのUnitを構成しています。できれば毎日1つのUnitに目を通しましょう。語彙力アップのためには、少しずつ確実に進めるよりも、不完全でも一気に多くの単語を覚える方が効率が良いのです。たとえば1日に3単語を確実に覚えるよりも、うろ覚えでよいから30単語のシャドウイングをしてください。1日にいくつ覚えても忘れる率はほぼ同じですから、たくさん覚えてたくさん忘れる方が効率がよいのです。
もちろん、すでにかなりの英語力がある方は、どんどん先に進んでください。ただし、進みすぎて、つらくならない程度にしましょう。
Step 1 単語と出会う
単語のつづり字を眺めるだけじゃなく、語形や語源が類似した他の単語と比較してください。その上で、単語の意味を理解し、明確なイメージを持ちましょう。
Step 2CDで音を確認
発音がわからない単語はすぐに忘れてしまいます。まずは音を確認して、口に出してみましょう。慣れてきたらCD と一緒にシャドウイングするのがオススメです。
Step 3 自分で発音し、書く
丸ごと覚えるつもりでKey Phrase を声にしたり、書いたりしてください。受動的に読んだり聞いたりしているだけではなく、口や手を動かして自分の単語(発表語彙)にすることが、長期記憶につながります。
Step 4 何度も繰り返す
一度覚えたことも、放っておくとすぐに忘れてしまいます。繰り返し何度も本書を開いてシャドウイングなどしてください。