英語を学ぶ人なら、誰だつてネイティブ・スピーカーのように自由に英語で話したいし、言いたいことを正しい英語で伝えたいと思うでしょう。別の言い方をすると、英語をペラペラと喋る能力(fluency)と 、表現の正確さ(accuracy)を身につけたいと誰もが願つているはずです。では、そのためにはどれくらいの単語を使いこなせばよいのでしようか。下の表は英語教育学の研究者P.Nationの著書にある表です。
Levels | Converation | Fiction | Newspapers | Academic text |
1st 1000 2st 1000 |
84.3% 6% |
82.3% 5.1% |
75.6% 4.7% |
73.5% 4.6% |
Learning Vocabulary in Another Language(I.S.P.Nation)
これは英語学習者がどれくらいの語彙を覚えるべきかを調査するため、〈会話〉、(フィクシ∃ン〉、〈新聞〉、〈学術的文書〉など異なる種類の素材において、最頻出の2,000語がどれくらいの割合を占めているかを調べたものです。lst 1000は最頻出の1,000語、2nd l,000は1,001~ 2,000位 の単語です。上の表を見ると、最頻出1,000語 が英会話の約85%を占め、最頻出2,000語が英会話の90%を 占めていることがわかります。また、会話よりははるかに難度の高い新間でも,最頻出の2,000語が80%を占めています。
新指導要領によると、中学卒業までに2,200~2,500語を学習することになつていますから、中学英語を自在に使いこなせれば、かなり自由に英語で意思を伝えられるはずです。たとえば,手元の5億語のデータベースで調べてみても、英語の全動詞の50%を、たった35個の基本動詞が占めているので!実際、うろ覚えの難単語を使わなくても、基本動詞(have,take,make,do,say,seeなど)と前置詞(in,on,at,of,withなど)、副詞(up,down,outなど)を組み合わせれば、ほとんど無限の動作を表すことができるのです。
では、中学英語をちゃんとマスターしても、スピーキンクやライティングが難しく感じるのはいつたいなぜでしょうか。その理由は、基本動詞のコア・イメージとその連語関係(collocation)を 知らないからです。
まずはこく日常的な動詞と動作を考えてみましょう。特に動詞に気をつけて、次の日本語を英語にしてみてください。
「事故にあう」 「恐ろしい夢を見る」 「意見を言う」
「お茶をいれる」 「息を凝らす」 「人の頼みをきく」
「活気づく」 「青ざめる」 「腐る」
どれも基本動詞を使う問題ですが,次のような間違いはなかつたでしょうか?
「事故にあう」 ×meet an accident
「夢を見る」 ×see a dream
「意見を言う」 ×say an opinion
これはライティングの添削をしていると、よく見かける間違いです。正解は次のようになります。あやふやだつた表現は参照ページで確認してください。
これはライティングの添削をしていると、よく見かける間違いです。正解は次のようになります。あやふやだつた表現は参照ページで確認してください。
最初の2つだけ少し解説しておくと、haveという動詞は「持つ」という意味だけでなく、「経験を持つ ⇒ 経験する」という意味・用法があります。たとえば、have trouble「苦労する」、have a good time「楽しむ」、have an adventure「冒険する」なども、「経験する」のhaveだと考えればナットクです。(p.73)
このような連語関係を英語でコロケーシ∃ン(collocation)と言います。英文読解では、コロケーションを知らなくても、ある程度意味を類推することができるでしょうが、流暢さ(fluency)、正確さ(accuracy)が必要なスピーキングやライティングでは、あやふやな知識は役に立ちません。まずはPan 1に登場する基本動詞のコア・イメージとコロケーションをしつかりおさえてください。
さらに忘れてはならないのは、動詞と前置詞や副詞を結びつけた句動詞(phrasalverbs)です。前置詞・副詞のコア・イメージを動詞のコア・イメージとうまく組み合わせていけば、いちいち丸暗記しなくても、スッキリと頭に入れることができます。たとえば、hold on to Aという句動詞を、次のように分析してみましょう。
上のように考えると、この熟語の意味が納得できると同時に、おそらく瞬時に覚えられるはずです。もう1つ例を挙げましょう。
とても簡単に見えますが、実はこの熟語はCEFR C1レベルに分類される難熟語なのです。このようにコア・イメージをしっかり持つていれば、英熟語がスッキリ頭に入ってきますし、知らない熟語でも類推できるようになるのです。
各種民間試験でも大学入試問題でも、リーディングやライティングでグラフ・図表を扱う問題が頻出しています。そうした問題では、数量、頻度、比較、相関関係などの表現を自由に使いこなせる必要があります。また、問題によつては、face,hand,heartなど、身体の名詞を使う表現ばかりをまとめて出題したり、助動詞の慣用表現ばかりを狙うこともあります。これらの表現はPart4~7にまとめてありますから、こちらも忘れずにチェックしてください。暗記しなくても、スッキリと頭に入れることができます。たとえば、hold on to Aという句動詞を、次のように分析してみましょう。
本書の改訂にあたつては、姉妹編の『システム英単語〈5訂版〉』と同様、下記のデータを使用しました。
英単語と同様に英熟語においても、難しかつたのは複数のデータの活かし方でした。たとえばadhere to Aという表現は、各種CEFRのWord Listを見るとC2レベル以上となっていますし、各種民間試験でもそのレベルの扱いになつているのですが、難関の大学入試問題では毎年5大学程度で出題されています。そのほとんどが注無しですから、大学受験生にとつては覚えておくべき表現になります。
上記のデータを分析すればするほど、高校検定教科書と各種民間試験の相関関係、各種民間試験間のレベルの違い、各種民間試験と大学入試問題の相違など、受験生にとつては困つた矛盾点が数多く見つかります。本書の構成やレベル表示は、上記のデータを全てチェックした上で、最終的には最新10年間の大学入試問題を優先しました。
ただし、読者にはあまリレベル表示を意識しすぎることなく、まずは英語表現を整理する引き出しを作るつもりで、本書を端から端まで読んでいただければ幸いです。なぜなら、どんな試験においても,必ず初めての英語に出会うことになるのですから。
今回の改訂作業にあたり、いつもながら多くの方々のこ厚意に支えられました。まずは読者のこ支持がなければ本書は存在できなかつたわけで、これまでのたくさんの読者に御ネしを申し上げます。
また、いつも通り英文を校閲していただいたPreston Houser先生、ナレーターのAnn Slaterさん、Howard Colefieldさんには数々の助言をいただきました。駿台文庫の皆様、とりわけ小島茂社長、編集の上山匠さん、斉藤千咲さんには大いに助けられ、励まされました。今回も気心の知れた仲間に囲まれて仕事ができたことは,この世の至福と言うほか、言葉が見つかりません。皆様に深謝いたします。
本書では熟語の頻度や入試でポイントとなる重要度に応じて、下の3種類の表記で熟語を掲載しています。
次のレイアウトの熟語は、頻度も高く最重要の熟語で、しかも動詞や前置詞のイメージをつかむコアになる熟語です。解説・例文などを通 して、その用法をしっかり覚えましょう。
次のレイアウトの熟語は,①の次に重要な熟語です。各種民間試験(CEFR B2レベル以下)でも出題されうる表現ですから、意味を覚え、赤シートで隠したときに、赤字部分を補充できるようにしましょう。
次のレイアウトの青字で表記されている熟語は、大学入試でもやや頻度が低く,CEFR Clレベル以上です。滅多に見かけないかもしれませんが、難問では急所になることもあります。ここまでやれれば、最難関大の入試問題も怖くありません。
本書では動詞や前置詞などのイメージで熟語を分類しています。これを最大限に活用して、すでに知つている熟語から、未知の熟語へと知識を広げていきましょう。たとえばgo on Ving「Vし続ける」という熟語を知つていたとしましょう。この熟語は本書では次のように提示されています(p.18)。
ここでVlngとto Vの違いを学習し、次に参照ページ(p.248)を 見てみましょう。すると、go on Vingが次のようなグループになつているのがわかります。
このように〈動詞+on+Ving〉で、「Vし続ける」という熟語が並んでいます。これなら、簡単に3つをまとめて覚えられるでしょう。さらにここにあるkeep On Vingの 参照ページ(p31)を確認すると、次のようなグループが現れます。
これを見れば、keepにも継続の意味があることが一目瞭然ですし、ここでもkeep On Vingだけを覚えようとするより、〈継続のkeep〉のグループ全体を把握した方がかえつて覚えやすいでしょう。
go on Vingという簡単な熟語から始めて、本書の参照ページを追つていくだけで、さらに6つの熟語が整理できるという仕掛けなのです。こうして覚えるべきことをグループ化し、複数のグループをつないでいくのが本書の戦略です。バラバラに1つずつの熟語を丸暗記するのではなく、まずは動詞や前置詞などの意味をとらえ、そのグループの特徴を理解しましょう。さらにそのグループを別のグループとつなげて、大きなネットワークを構築できれば、もう忘れる心配もなくなるでしょう。なぜなら、何かを覚えるときには、できるだけ多くの項目と結びつけることが、長期に記憶を保持する秘訣だからです。
もう1つ、おすすめの利用法があります。本書を常に身近に置いておき、未知の熟語に出会つたり、すでに覚えたはずの熟語の意味を忘れたりしたとき、本書で調べてみることです。その熟語が意外なグループに入れられていたり、日からウロコの解説に出会つたり、きつと得るところがあるでしょう。また、もしある表現が本書に熟語として収録されていなくても、キーワードを意識して類推すればズバリわかることがあります。たとえば次の表現はどんな意味でしょうか。
Standard English will fragment into a lol of dialects(大阪市大)
下線部にはfragment into Aという熟語がふくまれています。たとえfragmentを知らなくても、p.223(特にchange into)を 理解している人ならピンとくるにちがいありません。(これは「ばらばらになつてAになる」という意味です。)
こんなふうに、この本は応用と発展がきく英語力の養成にも役立ちます。「これは○○のmakeだ!」とか「この熱語は××のforの仲間じゃないか?」というふうに考える習慣がつけば、システムでカバーできる範囲は大きくひろがつていくはずです。
リスニングやスピーキング対策として,本書の音声(無料ダウンロード)をぜひ活用してください。<最重要熱語>と<重要熟鱈>のすべてが下の形式で収録されています。
まずは本書の文字を目で追いながら音声を聞いて、何度でも立ち止まつて、熟語の語法やイメージを確認しましょう。英語の表現があやふやなうちは聞き流すだけでは効果が上がりませんから気をつけてください。もちろん、慣れてきたら何度も間き流して例文が口をついて出てくるくらい聞き込みましょう。
■ 『システム英熟語〈5訂版〉』無料音声ダウンロード
https://audiobook.jp/exchange/sundaibunko 上記アドレスまたはQRコードよりaudiobook.jpの駿台文庫ページにアクセスし、シリアルコード【11454】を入力してください。 |
熟語およびその意味のなかに用いられているA,B,Cは、その位置に名詞または代名詞が来ることを示します。 ただし一部で形容詞的なものもふくむ場合があります。(例regard A as BのBには形容詞も来る。)
●熟語にふくまれる所有格は次のように区別されている。
●口は可算名詞、回は不可算名詞を表す。
自は自動詞、他は他動詞を表す。(自動詞と他動詞の区別についてはp.114)
●( )の部分は、それがない形でも用いられることを示す。
例 to say the least(of it)は of itがない形でも使う。
●[ ]の部分は、その直前の語と言い換え可能であることを示す。
例 fall ill [sick]はfall Sickの形もあるという意味。
●Vは動詞の原形、to Vは to不定詞、Vingは動詞のing形を表す。
●←は原義(文字通りの意味)か ら熟語の意味への発展を示す。
例 look down on A「Aを軽蔑する(← Aを見下ろす)」
●熟語の種類を次のように語順で表す。
<動詞+前置詞+名詞>型の熟語:V+前置詞+A 例 depend on A,result in A
<動詞+名詞+副詞>型の熟語:V+A+副詞 例 carry A on,turn A in
<動詞+前置詞+副詞>型の熟語のほとんどは動詞+副詞+名詞の語順でも用いる。(頻度的にはむしろ後者が多い)(p.
232ミニレクチャー「どこが違う?前置詞と副詞」参照)
●「ポイン トチェッカー」は特に重要な言い換え表現をチェックするためのマーク。
同熟?ほぼ同じ意味の熟語
同単?ほぼ同じ意味の単語
反熟?ほぼ逆の意味の熟語
同?ほぼ同じ意味の語句
「ポイントチェッカー」があったら、上のような単語・熟語を覚えているかどうかの確認をしよう。